2014年10月23日木曜日

Frailtyと高齢者心不全について

 まずはFrailtyについてです。虚弱を意味します。可動性、筋力、バランス、運動機能、認知機能、栄養状態、持久力、活動性など多様な要因が関与します。老化や病気でサルコペニアと呼ばれる筋肉量減少症が生じると筋力低下や歩行活動量低下が起こり、それはエネルギー消費低下をもたらし、食欲低下から慢性的栄養不足になる虚弱サイクルが成立すると考えられています。
 虚弱の定義には、5%以上の体重減少や20%以上の筋力低下などさまざまありますが、死亡、入院、転倒、ADL障害などをもたらします。
 老年症候群という概念があるそうで、せん妄、慢性めまい、転倒、尿失禁などを起こしやすく、多様性、脆弱性、複雑性がkey wordです。
 高齢者医療においては特に医師、看護師、ケアマネージャー、栄養士、薬剤師などチーム医療・ケアが重要であり、糖尿病、認知症、家族サポートなど包括的アプローチが求められます。

 次は高齢者心不全です。心不全の予後は悪く、高齢者は心不全の発症率が高いです。心不全の原因として、虚血、高血圧、弁膜症、心筋症が代表的で、基礎疾患により死亡率が異なります。弁膜症の予後が悪いです。60歳以上ではAR(大動脈弁閉鎖不全)、70歳以上でMR(僧房弁閉鎖不全)、80歳以上でAS(大動脈弁狭窄)が多いと考えられています。
 高齢者のASでは急性心不全による死亡率が特に高いことが知られています。加齢による変性型のASが多いとのことです。ASは、加齢とLDL-CとCKDに関係する生活習慣病の一つと考えられています。TAVIや補助人工心臓などの新しい技術が導入されています。
 CHF(うっ血性心不全)の治療では、利尿薬、強心薬、血管拡張薬、神経体液因子(心臓リモデリングに関連)、ACE阻害薬、ARB、β-遮断薬、抗アルドステロン薬、CRT-D、VAD、ICDなどが挙げられます。
 心不全死と関係する因子として、心室性頻拍(VT)、BNP、NYHA、年齢、糖尿病、体重などが指摘されています。心不全の急性増悪に関連するものとして、塩分・水分過剰、CKD、不整脈、貧血、感染が挙げられます。また、心不全に併存する病態として、心房細動)AF)/心房粗動(AFL)、慢性腎臓病(CKD)、認知症、低栄養、腎機能増悪(WRF)、高齢、貧血などがあります。
 高齢者の心不全のセルフケアは認知機能に依存します。心不全のケアは心臓疾患と他臓器老化が絡むため、包括的ケアが求められます。CVPはWRFの最も重要な予後規定因子と考えられています。また、心不全の約20%に低ナトリウム血症を認め、中期予後を悪化させると考えられます。
 Performance status(PS)という概念があり、虚弱、サルコペニア、悪液質、低栄養などが関係します。Frailtyに関係する物質として、カルニチン、グレリンなどがあり、運動療法として、レジスタンストレーニングで運動耐用能を向上させることが求められます。

 ある意味、人間の寿命との戦いという側面もあり、なかなか難しい問題であり、早急な解答は得られません。重い課題です!!!


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

2014年10月19日日曜日

開院9年

 2日前の10月17日に開院9年を迎えることができました。
 本当にいろいろありました。これからもいろいろあると思いますが、そのたびごとに自分がベストと感じる道を進むしかありません。
 いろいろな患者さんを診察する機会を得られました。もうすでに他界された方もいます。私の方針と合わずに受診されなくなった方もいます。これからもこういったことはあると思いますが、それはやむを得ないと思います。
 より良い医療を模索していくだけです。これからも畑間内科クリニックをよろしくお願いいたします。

2014年10月11日土曜日

SGLT2阻害薬

 昨夜は久しぶりに講演会に参加しました。以前はよく参加していたのですが、どうしても製薬会社共催のものが多く、自社製品に関連した情報に限られる感じがあって、本当に自分に必要な情報ではないという気がしてきて、参加回数が自然と減ってきました。
 その分ゴルフの練習をしたり、スポーツクラブで走ったり泳いだりする回数が増えました。_(_^_)_

 ここ1年弱の間にSGLT2阻害薬と呼ばれる糖尿病の新薬が数種類市場に導入されてきました。昨夜はその1つであるルセフィという商品に関連したものです。SGLT2阻害薬に関する講演会に出席するのはこれが初めてです。
 SGLT2阻害薬は大雑把にいって腎臓でのグルコース再吸収を抑制して尿中にグルコースを喪失させることで血糖の低下を図ろうとする薬です。とても意外だったのは、腎臓での糖代謝、とりわけ糖新生や解糖系、糖のろ過や再吸収についてはいまだに一定の結論に至らず、議論が多くなされており、というより議論が停滞しているというほうが正確かもしれませんが、新たな研究がなされていないという感じなようです。
 少なくとも腎皮質の近位尿細管では糖新生がなされて、腎髄質の遠位尿細管では解糖がなされていると考えられています。髄質では嫌気的な環境で濃度勾配を形成して再吸収を行うために多くのATPを必要とするためなようです。

 腎臓でのグルコースの動きは、腎糸球体に1日1500Lの血液が流入して、150L/日の原尿が
形成され、その中のほぼすべてのグルコースが再吸収されて(血糖が100mg/dlとすると150gのグルコース)、尿中グルコース排泄はほぼゼロになります。
 尿細管細胞の尿細管腔側にSGLT1/2がNa勾配を使って能動輸送を行い、血管側にGLUT2などがグルコース勾配に従って輸送しています。

 SGLTはいくつか分離同定されているのですが、ここで重要なのはSGLT1とSGLT2です。SGLT2は、近位尿細管のS1セグメントに存在して(より糸球体に近い側)グルコース再吸収の90%を担うのですが、低親和性で50%飽和です。SGLT1は近位尿細管のS2/3セグメントにあり、残りの10%のグルコースを高親和性で15%飽和で完全に行うのです。

 健常人においてはろ過されたグルコースが180g/日とすれば、SGLT2で160g/日のグルコース再吸収が50%飽和でなされ、SGLT1により20g/日のグルコースが15%飽和で再吸収されるというわけです。糖尿病状態では血糖が高い分ろ過されるグルコースも多くなり、またSGLT2が増加するため、360g/日のグルコースをSGLT2で300g/日のグルコースを50%飽和で再吸収して、残りの60g/日のグルコースを45%飽和で再吸収するとシュミレーションできます。
 腎性糖尿という疾患があるのですが、これはSGLT2遺伝子変異で、尿糖が出るものの血糖は正常で、低血糖や体液量減少を伴うことは極めてまれです。
 SGLT2阻害薬でもSGLT1で代償されるため、低血糖は生じないと考えられています。

 健康成人でSGLT2阻害薬を使用すれば、180g/日の原尿に対してSGLT2でのグルコース再吸収はゼロになり、SGLT1で100%飽和で130g/日再吸収されて、尿中には50g/日のグルコースが排泄されることになります。糖尿病患者でSGLT2阻害薬を使用すれば、360g/日の原尿に対して発現の増加したSGLT2を2/3ブロックしたとして100g/日再吸収されて、SGLT1で100%飽和で130g/日再吸収されて、尿中に130g/日のグルコースが排泄されると推定されます。この場合、80g/日×4kcal/g
=320kcal/日のカロリー減少になるはずです。それにしては、体重減少は2-3kgでHbA1c低下はせいぜい1%程度でマイルドな効果しか発揮できない薬ですね。

 SGLT2阻害薬ではインスリン抵抗性の改善が示唆されており、利尿剤のNa排泄効果と異なり尿糖排泄は1日中持続すると考えられています。ただし、腎機能低下例ではGFRが低下するため、SGLT2阻害薬の効果が減弱します。NaClの再吸収に関して、健常時ではSGLT1+SGLT2で65gの食塩再吸収を行うのに対して、SGLT2阻害薬投与時にはSGLT1のみで78gの食塩再吸収を行うと考えられており、尿量増加と相まって尿浸透圧は低下すると考えられています。(ここは少し議論を要するかもしれません)

 ここからはルセフィの擦り込みですが、SGLT2/SGLT1選択性が強く、4つの代謝経路があり腎機能低下の影響も受けにくい、尿酸低下作用(URATv1=GLUT9)、尿中Na排泄増加に伴う24時間血圧計におけるnon-dipperパターンの改善などなどの説明がなされました。ここは話半分で聞いておきます。最近ABPM(24時間血圧計)を始めたので、最後の点は評価してみたいと思いました。

いずれにしろ、久しぶりに講演会に参加したので真剣にノートしてしまいました。(笑)






2014年10月9日木曜日

歓送迎会

 少し前のことになるのですが、重要なイベントなのでアップしておきます。
9月13日の土曜日にシーホークのすし割烹ともづなで歓送迎会をしました。3年弱パートの医療事務としてがんばってくれた坂本さんの送別と常勤看護師の松永さんと常勤医療事務の坂本さんの歓迎を行いました。

まずは定番の生ビールから開始しました。
 

少し時間がたっているのですが、おいしかったことだけは覚えています。



量も多すぎずに良かったです。





今日は食べログですね。


 初めて職場の食事会でシーホークを使用したのですが、福岡タワーも見ながら食事ができて楽しい時間を過ごせました。 みんなが希望するならば、またおいしいところに行ってみたいです。\(^o^)/