2011年11月20日日曜日

心房細動

11月18日の夜、心房細動(Af)の勉強会があったので参加してきました。講師は山王病院の熊谷浩一郎先生でした。福岡の心房細動治療のトップといえる先生です。カテーテルアブレーションと呼ばれる、左心房に心臓カテーテルを通して、肺静脈隔離術を行うものです。熊谷先生はボックスアブレーションを行うことで知られています。Complex Fractionated Atrial Electrogram(CFAE)という異常電位が検出されれば、CFAEアブレーションを行うということも話されました。
 Afのメカニズムとして4つ挙げられ、その対策を示されました。
1.異常自動能・・・肺静脈隔離術、局所アブレーション
2.マイクロリエントリー・・・CFAEアブレーション
3.マクロリエントリー・・・線状アブレーション
4.自律神経活動・・・自律神経節アブレーション
熊谷先生はボックスアブレーションという手法により、1+3を同時に行っているため、これでうまくいかない場合は、2を追加するとのお話でした。
 一般的に1年以上持続する長期持続型のAfの治癒率は60%程度です。残りの40%はDCショックでの治療になるようです。熊谷先生の成績はそれより10-20%程度よいようでした。
 つまり、初回セッション後の再発率は、発作性Afでは20%、持続性Afでは27%、長期持続性Afでは36%、心房頻拍/心房粗動3%ということでした。また、再セッション後の再発率は、発作性Afで11%、持続性Afで18%、長期持続性Afで30%とのことです。再セッションの際は、ボックスの伝導再開に対する追加アブレーションやCFAEアブレーション、上大静脈隔離を行うようです。
 合併症ですが、心タンポナーデ1%、脳梗塞0.2%、食道迷走神経障害0.2%、横隔神経障害0.2%とのことでした。
 心房細動の治療としてよく問題になるのが、レートコントロールかリズムコントロールかという問題です。一般論としては、生命予後に両者に有意差はないというものですが、基礎心疾患がなく、レートコントロールができているAfよりも洞調律のほうが心機能がよくなるというデータを示されました。さらに、Afの治療のために使う抗不整脈薬も次第に効かなくなるというお話でした。
 アブレーション後のワーファリンですが、CHADS2スコア(心不全、高血圧、75歳以上、糖尿病で1点、脳卒中/TIAで2点)で2点以上であれば、再発の可能性を考えて、発作性であれ持続性であれ、基本的にワーファリンを継続するということです。CHADS2スコアが1点までであれば、2か月でワーファリン中止するようです。アブレーション後5年間の血栓塞栓症と大出血の頻度はワーファリン中止群で有意に低かったとのデータがあるようです。
 抗不整脈薬はアブレーションの1週前に中止して、アブレーション後は再開して2か月程度服用させて中止するようです。これはブランキング期間と呼ばれ、焼灼の影響がでるため、不整脈を生じやすい期間のことのようです。
 アブレーション後2週間は激しい運動やアルコールは控えるように指導するが、事務などの軽い作業は翌日からでも可能のようです。
 アブレーション後の再発は、3か月以上たってAfを認める場合に再発と判断されて、その場合はベプリコールやアスぺノンやβ-ブロッカーなどを用いるようです。ここで、アブレーション後の不整脈はAfに限らないため、心房頻拍や心房粗動の場合は、ⅠAの抗不整脈薬は使用せず、β-ブロッカーが良いとのお話でした。
 アブレーションの優位性を説かれた熊谷先生も左房径が5cmを超える方にはアブレーションは行わないとのことです。それは成功率が低いからなのですが、線維化が強く、異常電位を焼灼しても消失させることができないからだとのことでした。拡張左房の症例には拡張不全を改善させるようにARBやACEIを使用して、血圧を十分にコントロールをして、肥満を改善させるなどの指導を行うとのお話でした。
 大変勉強になる勉強会でした。

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