骨粗しょう症の患者は全国に1200万人いると考えられており、骨折は寝たきり原因の2位であり、決して侮ることができない疾病です。
骨塩量は20歳ころにピークに達して、40歳過ぎまでそれを維持するのですが、女性の場合、閉経後5-10年で骨塩量が急速に減少して、その後緩やかに低下していくと考えられています。そのため、女性においては骨折転倒が寝たきり原因の1位なのです。
骨は骨吸収と骨形成を活発に行うダイナミックな臓器なのです。骨強度は70%が骨密度(BMD)と30%が骨質(骨代謝、骨梁構造、骨微細構造、骨石灰化)で規定されます。
脆弱性骨折とは、低骨量が原因で軽微な外力によって発生した非外傷性骨折で、脊椎、大腿骨頚部、橈骨遠位部などに生じます。
骨代謝マーカーには骨形成マーカーと骨吸収マーカーがあり、骨形成マーカーとしてはBAPやP1NPがあり、骨吸収マーカーとしてNTx, CTx, DPD, TRACP-5bがあります。その他にucOCが知られています。BAP, P1NPおよびTRACP-5bは腎機能に影響されません。
骨粗しょう症に対する食事指導として、1日当たりカルシウム 800mg、ビタミンD 400-800IU(10-20μg)、ビタミンK 250-300μgが推奨されています。
薬物治療開始時期は、大腿骨や脊椎の脆弱性骨折がある場合は骨塩量にかかわらず治療開始、大腿骨・脊椎以外の脆弱性骨折がある場合は、YAM<80%のとき治療開始、脆弱性骨折がない場合はYAM<70%のとき治療開始します。脆弱性骨折がなく、YAM70~80%のときは骨減少症と呼ばれて、大腿骨近位部骨折の家族歴があるか、FRAX>15%のときに高リスクと考えて治療を開始します。ここでFRAXとは10年以内の骨折リスクをWHOが国ごとに評価作成したものです。
現時点ではこのガイドラインの指標に沿って治療をするしかないわけですが、10年後、20年後に骨粗しょう症を減らすには骨減少症や正常者の閉経後の骨密度の低下をどう防ぐかが重要なような気がします。そうでないと20年後も骨粗しょう症の患者減少は期待できないかもしれません。治療と劣らぬくらい予防が重要である点で生活習慣病と共通点が多く、骨粗しょう症は生活習慣病だとおっしゃる先生もいるほどです。今後解決すべき重要な課題と考えます。
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