2013年11月28日木曜日

睡眠、そして脂質

 今日は先週金曜と今週の月曜に勉強させてもらったことを書こうと思います。
まずは、睡眠です。睡眠といえば、多くの方が睡眠時無呼吸症候群(SAS)を思い起こすのではないでしょうか?いびき、無呼吸、低酸素血症そして生活習慣病との関連などについてはテレビなどでも時折取り上げられています。今日の話題は睡眠のもっと生理的な側面についての話です。
 睡眠中枢は視床下部前方にある視索前野にあり、睡眠中に活動します。一方、覚醒中枢は視床下部後方に3か所認識されています:視床下部後部、中脳上部。これらは覚醒時に活動します。
神経ペプチドのオレキシンというものが同定されており、オレキシン神経と呼ばれる視床下部に存在する、オレキシンを作り脳内に広く投射してオレキシンを分泌して睡眠覚醒調節をする神経細胞が知られています。オレキシンがなくなると、ナルコレプシーになることが知られているそうです。ナルコレプシーとは思春期に多く発症し、日本では600人に1人いるのです。耐え難い眠気、金縛り、脱力発作が特徴的症状です。オレキシン神経を抑制するとノンレム睡眠になるようです。オレキシン神経は覚醒中枢を活性化し、覚醒状態を安定化するのに寄与しています。
 ベンゾジアゼピン系睡眠薬は不眠の短期治療には有効ですが、浅い眠りが増えて、長期では耐性と反跳性不眠、記憶の消失などが生じます。一方、メラトニンという物質が松果体から分泌されており、睡眠中にメラトニン血中濃度が上昇します。メラトニン受容体は視交叉上核に存在するMT1、視交叉上核と網膜に存在するMT2、さらに部位不明のMT3が知られています。ラメルテオンという新しい睡眠薬があるのですが、MT1/MT2受容体作動薬であり、自然な眠りを誘発する安全な睡眠薬と考えられています。
 現在オレキシン受容体拮抗薬が睡眠を誘導することがわかっており、サポレキサントというオレキシン1・2受容体拮抗薬はさらに安全で自然な眠りを導く睡眠薬が開発中とのことでした。

次は脂質です。脂質といえば、動脈硬化との関連が深いのでまずはその話から。
動脈硬化には2種類あり、太い動脈の粥状硬化で全体の30%で、数ミリから数センチの動脈で脂質異常、糖尿病、メタボと関連が深く、心筋梗塞や大きな脳梗塞に関係しています。一方、細い動脈の細動脈硬化で全体の70%で、200ミクロンの動脈で高血圧と関連が深く、脳出血や小さな脳梗塞(ラクナ梗塞)に関係しています。
 日本人の栄養は、①食塩摂取が多い、②カルシウム摂取が少ない、③動物性蛋白質摂取が少ない・・・高血圧、脳卒中の多発、④飽和脂肪摂取が少ない、⑤炭水化物摂取が多い、⑥魚(n-3系不飽和脂肪酸)の摂取が多い・・・脂質異常、心筋梗塞の抑制、という特徴があります。
 n-3系不飽和脂肪酸は0.5-0.7gで抗不整脈作用が認められ、抗血小板作用は2gまで直線的に増加します。また、EPAとDHAのどちらがよいかという結論はまだ出ていません。カルシウムの吸収は、乳製品が50%で、野菜や小魚が10-25%ですから、乳製品にも捨てがたいものがあります。

ここで高コレステロール血症の治療薬として現在開発中のものについて触れてみたいと思います。一つはproprotein convertase subtilisin/kexin type9(PCSK9) inhibitorです。モノクローナル抗体で2-4週に1回注射するようです。スタチン治療をしている症例でさらに70㎎/dl程度低下できるようです。もう一つはchoresterol ester transfer protein(CETP) inhibitorで、HDLがVLDLやLDLに変化する際に必要な蛋白であるCETPを阻害してHDL上昇が証明されています。ただし、血圧上昇のため開発中止に至った薬剤もあるため、現在進行中の治験が終わる2017年まで何とも言えません。

2つとも面白い勉強会でした。

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