2012年6月21日木曜日

講演会あれこれ

昨日はCOPDの勉強会、今日は内分泌の勉強会に参加しました。目新しさはありませんでしたが、自分の診療がスタンダードなものであることを確認できました。診療後に出て行くのも大変ですが、勉強の継続が必要ですからね・・・。

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2012年6月17日日曜日

血清りポ蛋白と粥状動脈硬化

6月14日の夜は九州医療センターのシーサイドハートカンファレンスに参加しました。講師は大阪大学の山下静也先生です。まず、リポ蛋白代謝についてですが、小腸でカイロミクロン(B48,E,CⅡ)が形成されます。これがリポプロテインリパーゼで分解されて、カイロミクロンレムナント(B48,E)が形成されます。また、VLDL(B100,E,CⅡ)がリポ蛋白リパーゼで分解されて、IDL(B100,E)、さらに肝性 トリグリセリドリパーゼ(HTGL)でLDL(B100)が形成されます。動脈硬化惹起性があるレムナントとして、これらのカイロミクロンレムナントとVLDLレムナント(IDL)が知られています。中性脂肪(TG)が高くなれば、冠動脈疾患のリスクが上昇することが知られています。TGが88mg/dl上昇すれば、冠動脈疾患リスクが男性32%、女性76%増加することが知られています。
レムナントリポ蛋白は酸化変性を受けずにマクロファージに取り込まれ、泡沫化させますが、LDLでは酸化されることが必要で、酸化LDLがマクロファージに取り込まれます。
レムナントの測定法として
①ポリアクリルアミドゲル(PAG)ディスク電気泳動でmidbandやbroadβパターンを認めること、
②アガロース電気泳動でbroadβパターンを認めること、
③超遠心法;IDLコレステロール定量、
④Immunoaffinity chromotography:RLP-コレステロール(RLP-C)、
⑤直接測定法;RemL-C 、
⑥アポB48測定法(ELISA,CLEIA法)が知られている。
ここで、④の免疫吸着法ではカイロミクロン、VLDL, アポrich HDLも含んでおり、TG高値検体で高くなることがあるようです。これに対して⑤の直接法ではカイロミクロンレムナントとVLDLレムナントの両方を測定しており、自動分析が開発されており、誤差も少なく、高TG症でも正確に測定可能といわれています。
家族性高コレステロール血症(FH)においてmidbandを認めれば、冠動脈疾患が多いことが知られている。この場合、IDLコレステロールが高くなります。
高レムナント血症として以下のものが知られています。
原発性として、
①家族性Ⅲ型高脂血症:アポE2/2、アポE欠損症、
②HTGL欠損症、
③FH,
④家族性Ⅳ型高脂血症、
⑤家族性Ⅴ型高脂血症、
二次性として、
①糖尿病、
②内臓脂肪型肥満、
③ネフローゼや腎不全などの腎疾患、
④甲状腺機能低下などが知られています。
カイロミクロンレムナントの作用として以下の点が指摘されています。
①small dense LDLの上昇、HDLの低下、
②炎症の惹起(MCP-1,IL-1βなどが関与)、
③血管内皮細胞のapoptosis, 機能不全、PAI-1の流入と蓄積、
④血管平滑筋の増殖などが知られています。
アポB48とアポB100の構造は似ていることが知られています。アポB48はⅠ型、Ⅲ型、Ⅴ型高脂血症で上昇するといわれています。
高脂肪食で総コレステロール、LDL-コレステロール、HDL-コレステロール、アポB100は変化せず、TGやアポB48は上昇します。そのピークは3時間から4-5時間に遅れるようです。RLP-TGとRLP-コレステロールは高脂肪食でより上昇するといわれています。
食後高脂血症とは、食後にカイロミクロンレムナントを中心としたTG-rich lipoproteinが血中に蓄積し、高TG血症が遷延した状態で、動脈硬化惹起性であることが知られています。食後高脂血症は心血管疾患のリスク因子であり、急性心筋梗塞、狭心症と突然死などが増えるといわれています。
食後高脂血症の治療は以下のものが知られています。
①スタチン:食後のTGの上昇が下がる、アポB48の低下は軽度、
②フィブラート:CD36-null mice(高脂血症のモデル動物)で、食後のTG上昇が抑制される、
③エゼチミブ:TG,アポB48、FFA,RLP-Cの上昇が抑制される。
最後に動脈硬化性疾患の治療ガイドラインが改定された点について説明がありましたが、詳細は割愛します。印象に残ったのは、non-HDL-コレステロール(TC-HDL-C)が総アポB値のサロゲートマーカーになり、、VLDLレムナントと相関して、食後の採血でも可という点でした。
大変勉強になったのですが、もう少し自分でもこれらについて知識を深めたいと感じました。

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