2014年3月10日月曜日

COPD: チオトロピウム発売10年

3/6にチオトロピウムの発売10周年の記念講演会に行ってきました。

 まず、COPDの診断ですが、久山町研究で気管支喘息は2%(事前診断37.5%)、COPDは8.4%及び喘息とCOPDのオーバーラップ0.9%(事前診断はあわせて17.5%)であり、一般人口の1割がCOPDを有しているのに、診断率が低いため、その助けのためCOPD集団スクリーニング質問票(COPD-PS)というものが紹介されました。使用してみたいと思います。カットオフは4点でスパイロメトリーを実施することが推奨されています。

 次に、COPD病態進行の指標として低酸素血症が重要で、とりわけ労作時の酸素分圧の低下を診断するために、6分間歩行試験が推奨されていました。TORCH studyではFEV1の年間低下がCOPDで55ml、SAL(salmeterol)で42ml、FP(fluticasone propionate)で42ml、SFC(SAL and FP in combination)で39ml、また、UPLIFT studyではコントロールで42ml、TIO(tiotropium)で40mlです。

 FletcherのカーブではFEV1の減少率は3%で、COPDのFEV1の年間低下はstageⅠで40ml、stageⅡで47-79ml、stageⅢで56-59ml、stageⅣで<35mlで、重症なCOPDほどFEV1の低下は小さくなることは記憶されるべきです。
 さらに、COPDの管理目標として、身体活動性が重要視されています。

 ここで、気管支喘息とCOPDのオーバーラップの診断は、大診断基準として①気道可逆性としてメプチン4パフの15分後にFEV1の15%または400ml以上の改善、②喀痰中の好酸球増多、③気管支喘息の既往歴、小診断基準として④血清IgEの上昇、⑤アトピーの既往歴が挙げられています。さらに、呼気NO濃度も診断の一助になるでしょう。オーバーラップの場合は呼吸機能の低下が大きく、死亡率の上昇が知られています。
 COPDにおける気道収縮はコリン依存性が大きいことが知られています。

 病状進行の防止として、増悪が多いと予後が悪いと考えられています。FEV1が改善してもFVCも改善するのでFEV1%は不変となることがあるようです。

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2014年3月8日土曜日

肥満症と糖尿病

 3/5はヘビーな講演会に久々に参加しました。テーマがテーマですから参加された先生も多かったです。2時間に3演題は少し内容濃すぎかも・・・。
 スライドが速すぎて、十分にフォローできませんでした。細かい点は多少不正確かもしれません。速記習っておけばよかったな・・・。

 まずは、糖尿病と肥満症の総説です。インスリン分泌力は遺伝の影響が大きいですが、インスリン抵抗性は、肥満、過食、高脂肪食、運動不足やストレスなどの環境因子の影響が大きいと考えられます。
 糖尿病においては、長期的な血糖コントロールの悪化が問題なのですが(2次無効)、β細胞機能の低下が一因と考えられています。糖尿病診断時にはインスリン分泌は正常の半分と考えられています。
 糖毒性はインスリン分泌不全とインスリン抵抗性をもたらします。
 低血糖は総死亡を増やすことが知られていますが、HbA1cと総死亡の間にUカーブの関係があり、HbA1c 7.5%程度が総死亡が最低になるようです。Accord Studyにおいても厳格な血糖コントロールが総死亡を上昇させることが示されていますが、その一因として交感神経緊張や体重増加が推定されています。
 内臓脂肪100cmはBMI 25にほぼ相当すると考えられています。健診データによると、メタボリック症候群は男性で15%、女性で1.3%に認められるそうです。メタボの腹囲も男性では85cmのままでよいが、女性は90cmではなく80cmを適用すべきだという意見が多いようです。

 次は肥満および糖尿病に対する外科治療です。
肥満に対する外科手術はいくつかあるのですが、基本は腹腔鏡下に胃の縮小を行う手術です。手術適応は人種により若干違っているようですが、手術死亡率が0.1-0.3%であることからBMIもだんだん下がってきているようです。長期的合併症として、栄養障害や貧血などがあり、バイパス術では一生サプルメントが必要だということです。また、これまでは保険の適応がなく約200万の費用を要していたようですが、4月からはスリーブ状胃切除に保険が適用されるようです。
 糖尿病の外科手術で完全寛解は患者が若いほど、罹病期間が短いほど、BMIが大きいほど効果は大きいということです。これからは糖尿病外科がもっと多くなるのかもしれません。

 最後に、肥満の内科治療ということで、膵リパーゼ阻害剤の話がありました。1日の脂肪摂取量は年々増加しています。武田薬品が上梓を目指している新薬です。もう少し演者を絞ってじっくりと話が聞きたかったなあと感じました。こういう会の構成は個人的には嫌いです。一般の方への啓蒙ではないのでもう少し深く掘り下げてほしいです。

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