2012年5月26日土曜日

痛風の講演会

昨夜は痛風の勉強会に参加しました。講師は東京女子医大の谷口敦夫教授です。40年ぶりの新規の高尿酸血症治療薬であるフェブキソスタットがテーマです。
 痛風発作は未治療の場合、2年以内に78%が再発し、50%に7-9年以内に痛風結節が生じ、40%に腎障害が生じるといわれています。また、痛風と死亡リスクについては、全死亡も心血管死亡も上昇し、急性心筋梗塞のリスクも26%上昇し、メタボの合併が多いことが知られています。痛風の有病率については、日本の成人男性では1%と考えられています。痛風発症の素地となる高尿酸血症は増加傾向にあります。
 診断については、局所の予感を感じると、急激に発症して、4-12時間以内に疼痛のピークに達して激痛、発熱、発赤、腫脹という臨床経過が参考になります。そして発症から3-14日で改善します。つまり、必ず全く症状や所見のない時期があります(間欠性関節炎)。90%が単関節が侵され、膝から遠位の関節が多く、5%に痛風結節が認められます。高尿酸血症により尿酸塩結晶が滑膜に沈着して炎症を起こします。直接的には関節液を偏光顕微鏡で検鏡して尿酸塩結晶を証明することです。
 よく似た病態に偽痛風というものがあります。これはピロリン酸カルシウムの結晶が沈着するもので、高齢者に多く、膝、手、肘に多く、やや女性に多いものです。発赤や疼痛を伴うことは痛風と同じですが、持続は20日ほどにもなることがあり、やや長いです。関節軟骨の石灰化が生じます。
 痛風発作時には血清尿酸値は低下します。これは、サイトカインやグルココルチコイドに尿酸排泄促進作用があるためと考えられています。高尿酸血症の方の10%に痛風発作を認め、高尿酸血症は成人男性の20-30%に認められています。
 治療として、痛風はself-limitedの病態ですが、抗炎症薬を用いることで、より早く軽快できます。
NSAIDsはほぼ7日で軽快するといわれています。最初の24時間に比較的大量を用いて疼痛を抑えて、その後は通常量で維持することが推奨されています。グルココルチコイドはプレドニン35mg×5日間かトリアムシノロン20-40mg筋注が推奨されています。有名なコルヒチンですが、発症12時間以内に1.2mg、その後1時間以内に0.6mg追加する投与方法が有効といわれています。ただ、副作用として下痢が生じやすいです。したがって、痛風発作予防薬として重要と考えられています。 つまり、潰瘍、心血管疾患、心不全、肝疾患、抗凝固薬、腎障害、高齢などがなければ、NSAIDsで治療をすることが推奨されています。
 痛風が尿酸塩結晶の沈着による可逆性病態であることをかんがみ、高尿酸血症の治療は重要です。生活習慣病の改善と尿酸降下薬が中心です。生活習慣病の改善としては、肥満、アルコール摂取(ビールや蒸留酒)、食品として肉、魚介類をさけ、砂糖入りのソフトドリンクも尿酸が上昇します。逆に乳製品やコーヒー、ビタミンCは尿酸を低下させます。尿酸に悪影響はないと考えられているのは、ダイエットドリンク、ワイン200ml/日や高プリン体含有野菜(きのこやブロッコリー)です。 
 血清尿酸値を6.0mg/dl以下に下げると関節内尿酸塩結晶が減少して、痛風発作の再発が抑えられると考えられています。
 注意すべきは、尿酸降下薬投与開始後に生じる痛風発作があるということを患者によく説明しておくことです。微小結節の結晶が関与していると考えられています。NSAIDsやコルヒチンを携行させておくのも一法でしょう。そして、尿酸をゆっくりと下げることです。万一、痛風発作が生じても尿酸降下薬の量を変えないことです。
 また、痛風発作が生じた未治療例においては、痛風発作消失後2週間後に高尿酸血症の治療を開始することが推奨されています。アロプリノール100mg/日やベンズブロマロン12.5-25mg/日やフェブリク10mg/日から開始することが推奨されています。
 痛風や高尿酸血症について大変勉強になり、認識を新たにすることができました。

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